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スクリーン印刷コラム(69)

~版離れ条件の落とし穴~

スクリーン印刷の各種条件というと、「印刷速度」「印圧(スキージ押込み量)」「クリアランス」等々あります。これらの中で少し厄介な条件があります。それは「版離れ」の条件です。
当社では版離れ時要件の事を「版離れをサポートする機構」の条件として「離着」と呼んでいるので、これ以後「離着」として説明します。

当社の印刷機も他社の印刷機も「離着条件○○㎜」と表します。例えばある製品の離着条件が3.0㎜だったとします。そして試作時に使用した印刷機はN社のLS-Aという機種でした。ところが、量産を行う時に使用する印刷機はM社のLS-B使用することになり、試作時の条件3.0㎜をLS-Bに設定しました。
さて、これで試作と同じ様に印刷が出来るでしょうか?
 
実際その様にはいきません。なぜなら、離着機構が印刷機により異なるからです。離着動作というのは、版離れを補助するためにスクリーン版をスキージのストロークに連動させて引き上げることを言います。つまりスキージのストロークに連動してスクリアランス(スクリーン版とワークとの隙間)を大きくすることです。
スクリーン版の中心部はインクが乗っているためにその重さで版がたわんでしまいクリアランスが少なくなってしまいます。そのために印刷時にスキージが版の中央部にある時に版離れが悪くなってしまいます。
特に高粘度のインクで印刷するとインクの粘性が強くスクリーン版とワークの密着力が強いのでこの傾向が強くなります。離着を使わずにクリアランスだけで版離れを良くしようとすると、スクリーン版の両端では必要以上にクリアランスをとることになってしまいます。クリアランスを大きくすると、スクリーン版は伸ばされるので印刷精度が悪くなります。これを回避するために、印刷時にスキージの位置に合わせてクリアランスを大きく取る様にした機構が離着機構です。
しかし、離着機構もクリアランスを大きくするので必要以上の離着はやはり印刷精度を悪くしてしまいます。
 
さて、本題です。
先ほどの離着3.0㎜とは一般的にはスキージがストロークエンドに達した時のスクリーン版の最大引上げ量を示します。例えば離着3.0㎜とは、スキージのストロークが終了した時点でスクリーン版を3.0㎜引き上げることになります。ここで問題があります。印刷機の条件設定で離着量3.0㎜と設定した場合に、印刷機の離着動作が実際どうなっているか、です。
 
一つの例を示します。
離着ではスクリーン版の片側を引上げるので必ず引上げの支点が存在します。A図とB図と支点の位置が異なる印刷機があったとします。どちらの印刷機も離着条件を3.0㎜と設定するとスキージストロークが終了した時点でスクリーンの片方を3.0㎜引き上げます。A図とB図を比べて見てください。スキージストロークが終了した位置(スキージが停止した位置)のクリアランスは離着の支点がスクリーン版より離れていると大きい事がわかります。つまりスクリーン版の伸びが大きくなってA図の印刷機は印刷精度が落ちてしまいます。本来ならA図の様な印刷機の場合、B図の印刷機より離着量を少なく設定する必要があります。
離着装置は当社でも仕様の異なる離着機構があります。また、装置のライン構成により標準印刷機と離着機構が変更される事があります。他社の印刷機には当社の印刷機と外観が似ている印刷機もあります。試作時と量産時でメーカーの異なる印刷機を使用する場合は注意が必要です。
離着条件を設定したら、使用している印刷機がどの様な構造の離着装置なのか、そして離着条件を設定するとどの様な動作するか、を確認する必要があります。
ニューロング精密工業株式会社
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