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スクリーン印刷コラム(74)

~腐ったスキージ~

ある日、印刷が擦れてしまうのでアドバイスをお願いしたい、との電話がありました。
「印刷の擦れ」と言うとまず思い浮かべるのは、スクリーン版の詰まりです。
そこでスクリーンの状態を確認してもらうと、新しい版でも擦れるとのことでした。次に原因として推測されるのはインクの粘度ですが、新しいインクでも擦れるとのことでした。
スキージも印刷条件も変更してないのに、印刷が100%擦れるとのことでした。
 
電話では印刷の状況が充分に把握できないため、問い合わせ先を訪問して印刷の状況を確認しました。その結果、奇妙な現象が見られました。
印圧をぐんぐん高くしても擦れが解消しません。通常であれば印圧を上げていけば、擦れ現象は少しずつ変化があります。
しかし全く変わりません。スクリーン版を別のものに取り換えても変化が見られません。
印刷スピード、クリアランスなど、他の条件を調整しても変化無し。ワークの材質をPETや紙など変えても変化なし。
 
途方に暮れているとき、ふとスキージを見ると少し色が変わっているように見えました。
現地の方に「このスキージはいつから使用していますか?」と聞くと「ずっとこのスキージを使用して印刷しています。今までこのスキージで印刷出来ていました」との回答。
かなり使い込んだスキージだなと思い、スキージを折り曲げてみると、何となくコシが無い!!
ひょっとするとスキージが加水分解しているのか?
そこで、新しいスキージに取り換えてみると…。問題なく、綺麗な印刷が出来ました。
 
この事例により、スクリーン印刷の品質は、ゴムの硬度だけでなく、ゴム自体の弾性が影響することがわかります。
スキージの原料であるウレタンゴムは、空気中の水分によって加水分解が進みます。これによってウレタンゴムの分子結合が切れて行くと、ゴム弾性が劣化します。そうなるとゴムがまるでキャラメルキャンディのようになります。このようになったスキージに印圧を加えると、スキージは変形してスクリーン版に印圧を伝えることが出来なくなるのです。
これが今回の印刷擦れの原因です。
 
スキージの評価は、ゴム硬度だけでなく、ゴムの劣化も考える必要があります。
ウレタンゴムの加水分解はゆっくり進みます。製造後1年以上を経過したスキージは、加水分解が進行している可能性がありますので注意が必要です。
 
 

 
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