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スクリーン印刷コラム(61)

~スキージの作り方いろいろ~

現在、スクリーン印刷に使用するスキージはウレタンゴムが主流となっています。
ウレタンゴムは溶剤に強く、また摩耗し難いゴムのためにスキージとしては最適な材料で、最近は多種多様なウレタンスキージが各社から発売されています。
さて、このウレタンスキージには3種類の作り方があります。
見た目では大きな差が有りませんが、作り方により特性に差が出ます。
今回はウレタンスキージの作り方についてとその特徴をまとめてみました。

・ コンプレッション成形法
この製造方法は、「たい焼き」を作る方法に似ています。
ゴム原材料はちょうど粘土の様な感じの樹脂です。これに硬化剤などの配合剤を混ぜて上下二枚の金型に入れ、二枚の金型を合わせてプレス機で加熱プレスをします。ゴムの原材料は硬化剤との化学反応により硬化してウレタンゴムになります。加熱することを「焼く」とも言いますので、「たい焼き」を焼くのと同じです。「たい焼き」はガス火で焼くことが多いですが、ゴムは電気ヒーターで焼きます。
この方法はウレタンゴムに限らず、合成ゴムやシリコンゴムなどでも使われています。
しかし、この方法では長いスキージを作るのが困難です。長いスキージを作るには、大きな金型とこれをプレスする大きなプレス機が必要です。また、プレス機が大きくなると、均一にプレスすることが難しくなり、スキージ性能を安定して作ることが難しくなります。
したがって、最近では合成ゴム製スキージの製造以外には使用されなくなりました。

・ 注型法
金型を使う所は、コンプレッション成形法と同じです。
しかし、源材料の状態が違います。原材料が液体状なのです。
まず液体状のゴム原材料に硬化剤を混ぜて金型に入れます。コンプレッション法との大きな違いはプレス機が不要なところです。金型に原材料を入れてからオーブンで加熱します。液状のゴム原材料は硬化剤と化学反応により硬化してウレタンゴムになります。プリンや豆腐を作る様な感じと言えばイメージ出来ると思います。原材料は液状ですが、硬化すると硬度90度の硬いスキージも作ることができます。
大きなプレス機が不要なため、長いスキージの製造が可能になります。金型次第で色んな形状のスキージを作ることができます。また、液状の材料は扱い易いという特徴を持っています。現在、ウレタンゴムの製造では最も一般的な方法です。
ただし、スキージを作るのに時間が掛かってしまうため価格が高くなってしまいますが、金型を使用することで、高い品質のスキージが作れます。

・ 遠心法
回転ドラムを使う方法です。回転ドラムとは、ドラム式洗濯機の大きな物と思って下さい。
これに液体状の原材料を入れて高速回転させます。洗濯機で脱水をすると洗濯物が洗濯遭に貼りついているところを見たことがあると思います。これと同じ様に、原材料をドラムに入れて回転させると原材料がドラム表面に貼りつきます。この時、加熱を行うとドラム面で原材料が化学反応により硬化して、大きな筒が出来ます。これをカットしてスキージを作ります。
この方法では、一度に多くのスキージを作ることが出来るので製造コストを低くできます。また金型が不要です。さらには、カット寸法を変えることで簡単にいろんなサイズのスキージを作ることが出来ます。
カット精度を上げると、使い始めのスキージ研磨が不要になります。例えば、スキージを使い捨てにしたい時などに有効です。
ただし、金型を使う作り方に比べて若干スキージに歪みが残ります。筒状の物から切り出すために若干スキージにカールが発生します。とは言え、最近では製造条件の改善により、印刷に影響することはありません。

この様に、スキージの作り方によりスキージの性能や価格が変わってきます。スキージを評価する時は硬度や寸法だけでなく、作り方による差も評価することが重要です。
 
・ おまけ 
柔らかいウレタンスキージ(例えば硬度60度)は高温で溶けますか?と聞かれたことがあります。
ウレタンには、熱硬化性と熱可塑性の二種類があります。熱可塑性とはいわゆるプラスチックのことです。プラスチック製品は高温にすると溶けてしまいます。同様に熱可塑性のウレタンは高温にすると溶けてしまいます。
しかし、スキージに使用するウレタンゴムは熱硬化性のウレタンです。したがって、スキージはたとえ柔らかくても高温で溶けることはありません。
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