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スクリーン印刷コラム(76)

~極性溶媒はなぜウレタンスキージを膨潤させるのか~

以前このコラムで、極性溶媒がウレタンスキージを激しく膨潤する事を書きました。
今回は極性溶媒について少し詳しく説明したいと思います。
 
まず、極性溶媒とは何か。
以前このコラムに書きましたが、「極性」とは分子内の電気的な偏りのことです。
インクに使用している溶剤で、電気的偏りが大きい溶剤の事を「極性溶剤」と言います。代表的な物は「水」や「アルコール」です。
 
電気的な偏りとは何でしょう?
原子核の周りには原子が存在しますが、物質によりその電子を引き付ける力が異なっています。
スクリーン印刷の溶剤に関係の大きい酸素原子[O]や窒素原子[N]、塩素原子[Cl]は電子を引き付ける力の強い原子です。これらが含まれる溶剤(物質)では、電子がこれらの原子に引き寄せられます。
そして、これらの原子が溶剤分子の中で偏って結合していると、溶剤の分子は電子を引き寄せられた部分がマイナスに、その反対側がプラスになります。これが電気的な偏りである「極性」です。
図1
スクリーン印刷で良く使用される極性溶媒の分子構造は以下の通りです。
*N,N-ジメチルホルムアミド
*N,N-ジメチルホルムアミド
NMP(N-メチルピロリドン)
NMP(N-メチルピロリドン)
分子の中に酸素原子[O]や窒素原子[N]があります。しかもこれら原子が偏っています。そのため、極性の強い溶剤という訳です。
それではなぜ極性溶剤はウレタンスキージを膨潤させるのでしょうか。
以前のコラムでは、エステル系ウレタンゴムの化学結合の中心となっている「ウレタン結合」の部分が「極性」を持っています、と説明しました。この分子構造を示すと以下の様になります。
エステル系ウレタンゴムの分子構造
「エステル結合」と書いてある部分を見てください。
分子の中に酸素原子[O]があり、偏っています。したがって、エステル系ウレタンゴム(ウレタンスキージ)も極性をもっています。
 
極性を持った溶剤と極性を持ったウレタンが接触すると、ちょうど磁石同士が引っ付くように、溶剤とウレタンが引き合って膨潤します。
次に、スクリーン印刷で良く使用される非極性の溶剤の分子構造は次の通りです。
ジエチレングリコール
ジエチレングリコール
分子の中に酸素原子[O]がありますが、分子の中央にあり、偏って無いので極性はありません。
この様な溶剤ならば、ウレタンと引き合う事はないので膨潤し難くなります。
 
スクリーン印刷に使用されるインキに使用される溶剤は、非極性の溶剤が多く使用されています。ウレタンゴムは摩耗強度が優れているので、殆どの印刷においてはウレタンスキージで問題ないのですが、唯一の欠点が極性溶媒による膨潤なのです。
 
 
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