スクリーン印刷コラム(26)

~80℃付近の不思議~

透明なタッチパネルに要するポリエステル(PET)フィルムは、スクリーン印刷でよく使用されるフィルムです。
このフィルムに導電インクで電気回路を印刷して、パソコンのキーボード、ICカードなど、多くの電子部品が作られています。このPETフィルムは熱に対して不思議な性質があります。インクを印刷して乾燥する時、60℃以下の温度ではフィルムの変化はありません。ところが、80℃以上でインクを乾燥するとPETフィルムは縮んでしまいます。
また、金型でエンボス加工(フィルムに凹凸の形を付ける事)をする時、60℃以下で加工されたフィルムはそれよりも高い温度の雰囲気に放置するとエンボス加工された凹凸が元に戻ってしまいます。
ところが、130℃以上の高温でエンボス加工すると、80℃の雰囲気中に放置してもエンボス加工された凹凸に変化はありません。

なぜこんな事が起きるのでしょうか。これはPETフィルムの熱特性によるものです。プラスチックにはガラス転移点というものがあります。プラスチックは加熱していくと分子が熱により振動を始めます。さらに過熱すると分子が動きだしプラスチックは溶けてしまいます。この分子が動き出す温度をガラス転移点と呼びます。
PETフィルムの場合、大体60℃~80℃の間にガラス転移点があります。ここを境として物性が変わります。
したがって、この温度を境に冒頭に示した様な事が起こるのです。
ガラス転移点より充分低い温度で使用する場合には、PETフィルムは何も処理せずそのまま使用できます。
しかし、これより高い温度で使用する場合は、使用する温度より高温で熱処理をして、内部応力を取る必要があります。

これはPETフィルム以外のプラスチックフィルムでも言える事です。スクリーン印刷でプラスチックフィルムに印刷する場合、ガラス転移点がポイントです。

これからプラスチックフィルムに印刷をしようと考えているみなさん、一度ガラス転移点を調べてみてください。スクリーン印刷後の乾燥で材料に変化があったら、それはガラス転移点が関係している可能性があります。
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