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スクリーン印刷コラム(62)

~スキージの厚みの不思議~

お客様と印刷テストを行っていた時の事です。こんな質問が有りました。
 
「スキージの厚みは何で9㎜なんですか?」
 
そこで、筆者はこんな回答をしました。
 
「スキージの厚みは9㎜だけではありません。7㎜もあります」
 
すると、お客様は
 
「なんで9㎜、7㎜と奇数なんですか?10㎜ではダメなのですか?」
 
スクリーン印刷を行っている者にとって、スキージの厚みは昔から9㎜と7㎜でした。
社内の大先輩に聞いても「昔から9㎜だった」という回答でした。

筆者は9㎜が気になって、他社のスキージはどうなんだと思い、調べてみました。
調査方法は、スキージを販売している会社のホームページで紹介されている平スキージ仕様書から、厚みと幅について紹介されている件数をカウントしました。多くの会社で紹介されているということは売れ筋のスキージであると思い、このカウント数の総計からランク付けしてみました。
(例えば当社のホームページの場合、スキージとしては3種類の平スキージを載せていて、9㎜厚のスキージは3種類ありますから、3とカウントします。)
 
すると、もっとも多い厚みは9.0㎜で、以下6.0㎜、9.5㎜、7.0㎜の順でした。
一番薄いスキージは3.0㎜ですが、5.0㎜のスキージも有りました。また、厚いスキージでは最大20㎜でその他15㎜、13㎜でした。どうも7.0㎜~9.5㎜が最も普及しているようです。
なぜ、9.5㎜厚のスキージは多くの会社で扱っているのに、10㎜厚のスキージが非常に少ないのでしょうか。不思議です。
今回の調査は国内会社のホームページ検索なので、国外の状況は判りませんが、日本では10㎜厚のスキージはあまり使用されていないようです。

さて、スキージの幅寸法に付いても調べてみました。最も多いのが50㎜で、以下30㎜、40㎜、42㎜、45㎜、52㎜の順になりそうです。世の中、多くの種類のスクリーン印刷機が使用されているのでスキージ幅も多種多様であっていいいように思われますが、どうも30㎜~50㎜が主流のようです。

次に、現在の様なスキージが何時ごろから使用されているのか、古い資料を調べてみました。
現在のスクリーン印刷が普及し始めたのは、昭和30年頃と言われています。それからしばらくして、日本スクリーン印刷技術協会から昭和48年に出版された「スクリーン印刷ハンドブック」に紹介されているスキージ厚みは、6.0㎜、8.0㎜、9.0㎜でした。したがって、スキージ厚み9.0㎜は日本でスクリーン印刷が普及し始めた当初から存在するということになります。
いろいろ調べていると、スキージ厚みに付いて参考となる文献を見つけました。
昭和52年にセリグラフ社から発行された「新スクリーン印刷技術全集 第1巻 スクリーン印刷基礎理論」です。ここで紹介されているスキージ厚みは、1/2インチ、3/8インチ、5/16インチです。これを㎜に変換すると、12.7㎜、9.5㎜、7.9㎜となります。また、この文献にはスキージ幅も紹介されていて、15/8とあります。これを㎜に変換すると47.62㎜です。
もしかすると、現在のスキージ規格の起源はここにあるのではないでしょうか。スクリーン印刷が日本に紹介された時、同時に紹介されたスキージがインチ基準になっていたのでしょう。
 
3/8インチ厚スキージがその後9.0㎜や9.5㎜厚みスキージとなり、5/16インチ厚スキージが8.0㎜や7.0㎜スキージに。また、1/2インチ厚みスキージが13㎜厚スキージになったのでしょう。
スキージの幅となると、15/8インチ幅が、端数の切り上げや切捨てにより50㎜や45㎜、40㎜幅となった可能性があります。42㎜幅や30㎜幅を15/8インチで説明すると無理がありそうですが、例えば13/8インチを㎜に換算すると41.27㎜、10/8インチが同様に31.75㎜なので、もしかするとこのあたりが起源かもしれません。

スクリーン印刷法が日本に紹介された当時、スキージはインチ規格であり、これが起源となって現在に至るまでいろんなスキージが開発されてきました。スキージの厚みに関しては3/8インチが基準となってきたので、現在もスキージ厚みとして9.0㎜、9.5㎜が最も多くなっているのではないかと考えられます。
 
ニューロング精密工業株式会社
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